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2020年09月28日

在宅診療 医療・健康・福祉 救急救命 終末期・終活 地域・地域連携

854. 救命救急センター長に聞く”救急現場の声”

いわき市医療センター内にある「救命救急センター」。ここでは年間20,000人以上の救急患者、約4,200台の救急車を受け入れています。当法人の岩井淳一医師が非常勤医として勤務しているつながりもあり、救命センター長の小山敦先生に“救急現場の声”を聞く機会をいただきました。(令和2年9月7日取材:事業推進室・皆川歩美)

 

↑救命センター長の小山敦先生。お忙しいなか、取材に応じてくださいました。

 

皆川:「救命救急センター」と聞くと、一刻を争う状態の患者が次々と運ばれ、休む暇なく忙しいイメージですが、実際はどうですか?

小山先生:当院は「3次救急」を担い、重症患者を優先的に受け入れているので、慌ただしい時もあります。救急患者が少なければ、落ち着いている時もあります。

 

皆川:特に忙しいのは、いつですか?

小山先生:人手が少ない夜間帯ですね。年間約4,200台の救急車を受け入れていますが、内訳は平日の日中で1,200台、夜間や休日で3,000台。夜間・休日という人手が少ない時間帯に多くの救急車、救急患者を受け入れています。

 

皆川:日中は受診できる病院が多いですが、夜間はどこも開いてないので、「何かあったら救急車」と慌ててしまう気持ちもわかります。

小山先生:何かあったときには迷わず「救急車」や「救命救急センター」を利用してほしい。ただ、夜間帯に「足をくじいた」「指をやけどした」という軽症患者が救急車で搬送されてくると『救急車を呼ぶほどではないのでは』と感じるときもあります。ただ、90歳を超える高齢者が足をくじいてしまうと重症にもなりますから、すべて「軽症」ではありませんが。

 

皆川:夜間帯は人手がいないのに、さらに軽症患者が多いのは困りますね…

小山先生:「重症患者の受け入れ」という本来の役割を果たせなくなると問題です。データで見ても、実は重症患者より軽症患者が多いです。救急車で搬送された4,200件うち、1,200件は軽症患者です。重症患者は800件、中等症患者は2,100件となっています。

 

皆川:軽症患者の対応に追われて、重症患者対応が遅れるということもありますか?

小山先生:重症患者が搬送されてきたときには、軽症の患者さんに待ってもらうことはあります。また、重症患者対応中であれば、救急車受け入れ要請があっても、軽症と判断される場合には、他の医療機関への搬送をお願いする場合もあります。だから、患者さんからの「医療センターに運んで」などのご希望には必ずしも添えないので、それは理解してもらいたいです。

 

皆川:なぜ、医療センターに軽症患者までも集まってしまうのでしょうか?

小山先生:いわき市では14病院で「病院群輪番制」を取っていますが、夜間帯は医師が1人で対応しているなど、どの病院も人手が少ない。たとえ当番病院でも「手いっぱい」となれば、軽症患者でも当院で受けることがあります。また、夜間帯は小児の受け入れ先がないので、やはり当院で受けています。救急指定病院である「福島労災病院」「かしま病院」「常磐病院」などが受けてくれるケースもあります。

※指定を受けた複数の病院が当番制で救急患者の受け入れ・診療を行うこと。

 

皆川:当法人は「在宅療養」に力を入れ、住み慣れた自宅で最期まで暮らせるよう支援しています。救急現場から見て、何か感じることや期待することはありますか?

小山先生:山内クリニックは「わたしノート」が浸透している印象を受けます。「わたしノート」の良い点は、いざというときに家族が慌てずに対処できること。私たちの仕事は“救命救急”、つまり命を救うことです。それは救急車も同じです。駆けつけた限り、救急隊員は心臓マッサージを止めることはできない。たとえ本人が「最期は静かに迎えたい」と思っていても、それを知らずに家族が救急車を呼び、救命救急センターに搬送されれば、我々は命を救うため、あらゆる手段を使います。幸い一命を取り留めても、入院生活が待っているかもしれない。本人が「何が何でも100歳まで生きたい」と強く望んでいるなら話は別ですが、望んでいないのに救急搬送されてきた方もいます。だから、今後も「わたしノート」を活用してほしいです。

※「延命治療、望みますか?・わたしノート、発行から1年半」(2017年9月21日投稿)https://iwakikai.jp/blog/1329/

 

↑小山先生(左)と当法人の岩井医師(右)

 

↑広報「医和生」18号では、岩井医師と救命救急センターの皆さんが表紙に登場。

 

岩井淳一医師:当院では訪問診療、訪問看護を利用される患者さんや、「いわきの里」の入居者には必ず「わたしノート」を書いてもらっています。本人が望む最期を迎えてもらうことが、いわきの救急医療体制を守ることにつながります。

※当法人のグループ法人である社会福祉法人「いわきの里」では地域密着型特別養護老人ホーム「サンシャインよしま」と「ひなた」を運営しています。

 

<インタビューを終えて>

小山先生の話にもあった「軽症なのに救急車を利用する人が多い」という話は、いろんなところで耳にします。当法人の広報誌でも「救急車の適正利用」を取り上げたことがあります。しかし、それ以外にも「高齢者の望まない救急搬送」が救急医療体制を圧迫しているように感じました。市内の病院や介護施設などで、もっと「わたしノート」が広まれば、岩井医師が言うように、いわきの救急医療体制を守ることにつながります。小山先生へのインタビューを通じて、「救急医療」と「在宅医療」が密接に関わっていると理解できました。小山先生、そして救命救急センターのスタッフの皆さん、貴重な機会を本当にありがとうございました。

 

【関連情報】

いわき市医療センター救命救急センター:http://iwaki-city-medical-center.jp/shinryou/shinryou26.html

 

いわきの救急医療体制について特集した広報「医和生」18号(2020年8月発行)https://iwakikai.jp/publicity/

 

「救命救急センターの人材不足 実体験を語る・飯野地区出前講座で岩井医師」(2019年3月19日投稿:https://iwakikai.jp/blog/301/

 

岩井淳一医師紹介ページ:https://iwakikai.jp/doctors/#iwai_jun