いわき市の医療・介護関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンラインで開かれました。いわき市平地域包括支援センターの認知症初期集中支援チーム員が「認知症初期集中支援チーム〜認知症相談とチーム支援の流れ」と題して事例発表。同支援チームの概要説明(※)や支援の流れ、支援終了後の動きなどを共有しました。
※ 認知症初期集中支援チームの解説
「認知症初期集中支援チーム」の支援を受ける対象者は、在宅生活している40歳以上で、認知症の疑いがあるか、認知症の方。主に医療・介護サービスを受けていないか、中断しているのも条件。「支援チーム」は複数の専門職が支援対象者を訪問し、約半年間に渡って集中的に初期支援します。メンバーの専門職は、認知症サポート医の医師、保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士らで構成。設置場所は地域包括支援センターや医療機関などです。いわき市の認知症初期集中支援チームの概要(※スライド)も共有されました。同支援チームは市内7地区ごとに地区会議も開催しています。
※スライド
● 支援の流れ
今回の「多職種連携の会」は8月19日に開催。主に平地区の医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)ら37人が参加しました。発表者は事例を通して、「認知症初期集中支援チーム」の支援の流れを紹介。病院から「『どこに車を停めたか分からない』という高齢患者がいる」という通報が地域包括支援センターに届いた事例を取り上げました。その事例ではまず同支援センターの地区担当職員が、名前や世帯状況などの情報を病院から聞き取りした後、実際に家庭訪問して生活の様子や心身の状態、認知症状の確認などをして情報を集めます。その後、同支援センター内で情報共有をして支援の方針を検討。この時支援した患者は80代男性で、認知症状は明らかながらも本人も同居する妻も困っていない、かかりつけの医師がいなく、ほかに頼れる人と連絡が取れないため、同包括支援センターは、認知症初期集中支援チームに相談することにしました。
● メンバーが情報収集、地域と連携へ
その80代男性の支援相談を受けた認知症初期集中支援チームは、同居家族からの情報では認知症の状態がつかめないため、チーム員が訪問と面談を繰り返して情報収集。認知症を総合アセスメントするツール「DASC-21」(※)を活用しました。「脳疾患」「認知機能障害」「生活障害」など6つの観点でアセスメントするその「DASC-21」で評価した結果、認知症の具体的なエピソードがはっきりせず、訪問を続けることに。男性や妻と信頼関係を築き、生活歴の確認などをします。その際、男性の認知症を心配していたという来客と出会い、後々情報を聞き取り。数年前から免許証や車の鍵を「誰かに盗られた」といい、1年ほど前に道のない場所に入ろうとして事故を起こしたこともあったといい、具体的なエピソードが聞き出せました。同支援チームは、警察署と連携して危険運転のリスクを相談し、診断書の提出を求めてもらう協力も依頼。それにより認知症の診断結果を確認できました。その後男性は、妻とともに要介護認定を取得。地域包括支援センターが定期訪問を継続しました。さらに男性がよく利用するお店とも連携し、そのお店は男性が来店した際には丁寧に見守りしてくれるようになり、地域で支援する体制をつくりました。
※DASC-21とは(企画・制作:認知症アセスメント普及・開発センター):https://dasc.jp/about
● 発表後に意見交換
発表後、参加者が意見交換。ほかの地域包括支援センターの職員が、認知症の方のいる相談を受けて突然家庭訪問しても不審がられ、信頼関係を築くまでに時間が掛かって核心になかなか迫れない課題を共有し、「本人に事前に『地域包括支援センターに相談しておくから』と声掛けしておいてほしい」と協力を呼び掛けました。ケアマネジャーは、急に自分の名前も言えなくなったご利用者様に妻がショックを受けているケースがあり、ご家族の支援の必要性を訴えました。山内俊明会長(山内クリニック院長)は、地域包括支援センターの情報収集に感謝し、発表事例のようにお店も含めた地域で支援する体制づくりを呼び掛けました。
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