山内クリニック・循環器科の専門医、山内宏之医師が「高血圧症」について説明します。
高血圧症になると、どんなことに困るんですか?
ずばり、動脈硬化が進みます。
高血圧症自体は、普段、特に症状はありません。
しかし、そのまま放っておくと、動脈硬化が進んで血管がもろくなり、徐々に目詰まりを起こします。
そして、実は、この動脈硬化にも、はじめは何も症状がありません。
しかし、この動脈硬化が進むと、心臓の場合は狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)を発症し、
脳血管の場合は脳出血(のうしゅっけつ)や脳梗塞(のうこうそく)を発症します。
それ以外にも大動脈や手足、消化管や眼の血管の病気や、腎硬化症による腎不全のために、寿命が大きく縮みます。
特に症状がない「高血圧症」「動脈硬化」ですが、静かに病状が進行し、病気の種類によっては、突然死を引き起こす場合もあります。
どれぐらいからが高血圧症なの?
自宅での血圧:135/85mmHg以上
医療機関での計測:140/90mmHg以上
ポイントは、1度の測定だけでは判断せず、数日~数週間の平均の値で判断することです。
理想の数値としては、自宅での血圧:130/80mmHg以下です。
ただし、合併症や年齢・体の状態によって目標とする血圧は異なります。
どうやって高血圧症を治療するの?
高血圧症の治療は生活習慣の見直しから始めます。大切なことは、6つです。
①減塩(1日6g以下)
②適度な運動
③適切な食事
④禁煙
⑤肥満の人はダイエット
⑥お薬
薬は一生続けるの?
①減塩(1日6g以下)・②適度な運動・③適切な食事・④禁煙・⑤肥満の人はダイエット
この5つを実践できれば、薬が不要になる人もいます。しかし、多くの人がこれらを実践できないため、ずっと薬を内服し続けています。
薬を飲んでいれば安心?
「薬を飲んでさえいれば大丈夫だろう」と思っている方もいらっしゃいますが、薬を飲んでいても、自宅での血圧が130/80mmHg以下まで下がっていなければ意味がありません。
自宅での血圧を適宜測定して、かかりつけの医師に伝えましょう。医師は、その血圧に応じて、薬を調整してくれるはずです。人によっては何種類も薬を内服しないと目標血圧まで下がらない人もいます。
目標血圧を達成すれば大丈夫?
目標血圧を達成できていても、残念ながら、既に進んでしまった動脈硬化が治るわけではありません。また、血圧に問題がない人も、動脈硬化は年齢とともに進行します。なぜなら、動脈硬化とは血管の老化だからです。
しかし、血圧を正常に保つことで、血管の老化の速度を遅くし、健康寿命を伸ばすことができます。
結局、血圧の治療って何のため?
人間は誰もが、歳を取って身体が弱り、いつかは寿命を迎えます。血圧の治療とは、目先の問題を解決することではなく、健康に、生き生きと過ごす時間を少しでも長く伸ばすためなのです。
(この記事を書いた人:医師・山内宏之)
山内宏之医師プロフィール
岩手医科大学医学部卒業後、竹田綜合病院にて初期研修。太田西ノ内病院、白河厚生総合病院など県内各所の基幹病院にて勤務し、平成28年より福島労災病院循環器科に勤務。同時期に山内クリニックの非常勤医として外来診療を兼務。令和4年4月より、山内クリニックの常勤医となる。
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