介護を必要とする方への接し方を学ぶ「従事者対応力向上」研修がこのほど、いわき市労働福祉会館で開かれ、介護福祉に携わる職員約60人が理解を深めました。講師を務めた市権利擁護アドバイザーの上田晴男さんは福祉職員に求められる3要素として「支援力」「人間力」「経験値」を紹介。必要な支援ニーズを見立てて「本人の意思」を基に、具体的な手立てを根気強く試行錯誤し対応力をレベルアップさせる大切さを説きました。
「個別支援の向上を目指して」と題して講話する上田さん
● 「福祉支援は対人支援」
研修はいわき市保健福祉課権利擁護・成年後見センターが5月14日に主催。講師の上田さんは高齢者や障がい者の権利擁護の支援システムに関し、いわき市を含め全国各地でアドバイザーを務めています。研修で上田さんは「個別支援の向上を目指して」と題して講話。福祉職には「支援力」「人間力(人間性と価値)」「経験値」が求められると指摘(※)。「人間力」の説明で、AさんとBさんが同じ対応をしても利用者の反応が異なるのは「福祉支援は人が人にする直接的な対人支援だから」と、人間性を磨く大切さを説きました。そのほか、介護サービス計画の立案と実施のポイントについても解説しました。
※
①「支援力」の構成
<組織的支援力>
・理念、方針の確立と共有
・チーム・ネットワーク形成
・環境・条件(人・金・モノ・時間)
<個人的支援力>
・知識(利用者の状態を理解するために必要な障害や疾病などに関する知識)
・方法(多様な支援方法を学び、利用者の状態に合った対応を行う)
・技術(「方法」を具体的に実践できる力)
②「人間力」とは
・倫理(自分または法人・事業所は何を大切にしているのか(=価値)を確認・共有していくこと)
・自己制御(自分で心身の健康管理、感情や欲望のコントロール、仕事の段取りなどを調整していくこと。指導監督職の日ごろからのチェックが大事)
・関係力(人との関わり方、相手の状態に応じて話せる力。職場全体でコミュニケーションの取り方をチェック)
③「経験値」とは
・経験の長さではない(経験年数や年齢によって良い介護・支援ができるとは限らない)
・成功体験の蓄積(その場その時、適当に対応する失敗体験ではない。目的を定めて成功するために試行錯誤を繰り返す実践)
● 安全のために身体拘束 誰のため?
「問題行動」の捉え方と対応では、上田さんは「本人の意思」の大切さを強調。よく転倒する利用者が行動を起こした時、「安全のためにと身体拘束するのは、本人ではなく家族や支援者のためではないか」と問い掛け。転倒する前提でけがをしない環境を整えつつ「何をしたいんだろう、どこに行きたいんだろう」と本人の気持ちを考え、手立てを試行錯誤するよう話しました。自傷行為にしても、なぜするのかの原因や時間、場所を考えて対策を取るようアドバイス。「こうすれば本人は落ち着くのでは」と仮説を立て、試してみるのを繰り返すことで経験値が上がると説明していました。
【市権利擁護・成年後見センターの研修記事】
「成年後見制度と日常生活自立支援事業の活用」 2019年1月29日投稿:https://iwakikai.jp/blog/179/
「セルフネグレクトと介入拒否」 2018年3月2日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-417.html
「虐待対応」 2018年2月1日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-395.html