いわき市の医療・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。歯科医師が「認知症の口腔ケア」と題して発表。基本的な口腔ケアや、患者様が口を開かない時の対応などをアドバイスしました。
● 唇の乾燥に注意
今回の「多職種連携の会」は1月19日に開催。医師、歯科医師、薬剤師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護職員、地域包括支援センターの職員ら32人が参加しました。発表した歯科医師は「認知症の口腔ケア」について語りました。口腔ケアを始める前に注意すべき点では「唇や鼻腔の乾燥を確認してください」とアドバイス。乾燥した口でケアをすると唇を切ったりし、患者様に嫌な思いを残して口を開けてもらえなくなると注意しました。ケアする「基本姿勢」では、いすに座る患者様なら目線を同じかそれより低い姿勢にしてほしいと指摘(※図1)。上からケアすると汚れを奥に押しやってしまうといいます。寝たきりの患者様なら患者様の首を動かしてもらうか、自身が動いて磨く位置が見えるよう工夫してほしいとも。「見えない部分を一生懸命磨くと、歯ぐきを傷つけてしまう」と注意喚起。患者様にまひがあるなら、まひがない健康な半身を下にすると誤嚥のリスクを回避できるといいました。
※1
● 口を開けない患者様には
歯磨きする際には、口を開けたまま磨くと頬が邪魔をするので、閉じて磨くとやりやすいとコツをアドバイス。歯と歯肉の境目を中心にブラシを細かく動かすのが効果的とも。舌や上あごにはスポンジブラシの使用をおすすめしました。ブラシに汚れが付いたまま別の部位を磨くと汚れが残るので、その都度きれいにしてブラシの水気をふき取って磨くようにするのが誤嚥の予防になると助言しました。「口を開けない時」には、ガーゼや歯磨きティッシュを巻いた指を唇の脇から入れて、頬側を磨くのが有効とアドバイス(※図2)。頬側に細菌が多く、ここをきれいにするだけでも十分とも。「口を無理しては開けない。不快な思いが残ると口を開けてもらえない」と注意し、頬をマッサージするだけでもいいし「気持ちいい」と思ってもらえるのがまず大事だと心得を指導しました。
※2
● 心地よいと体で覚えてもらう
注意障がいや幻視で集中できない患者様には、傷をつける恐れがあるので隅々までやらないようにとも。頬側だけマッサージしてとにかく「『怖くない』『心地よい』というのを体で覚えてもらうのが大事」と繰り返し強調。アルツハイマー型は寝たきりになるまでは誤嚥しにくい一方、レビー小体型は比較的早い時期から誤嚥しやすいといった特徴も共有して注意を呼び掛けました。
● 口腔ケアの悩みを相談
「歯磨きの回数は?」という質問に、発表者は1日3回できなくても十分に磨けば1日1回でも大丈夫と回答。介護施設の職員は、寝たきりのご利用者様の舌がよく乾いてカピカピ状態になるケアの悩みを相談。発表者は、保湿剤を舌にぬって5分待つと汚れが浮き上がるといい、その時に優しく取ると汚れも落ちると答え、おすすめの保湿剤もアドバイスしました。口がいつも開いて口内が乾燥する患者様のケアについて相談を受けると、発表者は「これまで鼻が詰まって鼻で呼吸できない人もいました」と、鼻腔の通りをよくするよう勧めました。
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