いわき市の医療・福祉関係者が情報交換する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。市職員2人が認知症支援に関する「チームオレンジ」と医師不足の解決に向けた市の取り組みを発表。参加者は「チームオレンジ」の取り組みや危機的な医師不足の現状を学び、解決に向けて力を合わせるのを確認しました。
● チームオレンジの紹介
医師、歯科医師、薬剤師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、リハビリ職員など30人が参加し、3月16日に開催されました。最初は市地域包括ケア推進課の職員が「チームオレンジについて」と題して発表。「チームオレンジ」は認知症の疑いのある初期段階から心理・生活面を支援するため、市町村がコーディネーターを配置し認知症サポーターを中心に支援者をつなぐ仕組み、と説明しました。見守りや外出支援など各市町村が独自でつくる自由度が高いのが特徴で、2025年までに全市町村で整備されるのが目標になっているといいます。
● いわき市の取り組み
いわき市は認知症施策の4本柱の一つ「認知症バリアフリーの推進、認知症の人の社会参加支援」の一環で「チームオレンジ」の整備に取り組み、共生のまちづくりを目指すとしています。当たり前の暮らしの実現として「当事者」視点の発信を重んじ、市が取り組んでいる認知症の当事者とご家族の交流の場「よもの会」も紹介しました。市が2006(平成18)年から企業や学校などで開催している認知症サポーター養成講座では、これまでのべ約2万7000人を養成したといいます。2023年度からは積極的に活動したい人を対象に上級講座を開いてチームオレンジで活躍できるサポーターをつくっていく考えです。スーパーマーケットと連携したチームオレンジの整備工程の平地区の例も紹介しました。発表者は「認知症の方の困り事だけでなく『やりたいこと』を地域のインフォーマルな資源を巻き込んで実現させたい」と支援の協力を呼び掛けました。
● 医師が少ないいわき市
市地域医療課の職員は「いわきの地域医療と在宅医療介護連携支援センターについて」と題して発表。いわきの人口10万人あたりの医師数は、全国の256人より少ない172人で、病院勤務医は対全国比57%の98人。全国の60の中核市の中で10万人あたりの医師数はいわきは55位。さらに医師の平均年齢は全国50歳なのに対し、いわきは56歳。職員は「いわきの医師は少ない上に高齢」と深刻な現状を示しました。
● 不健康ないわき市民
市民の健康状況では、福島県は男女ともに「急性心筋梗塞」で亡くなる割合が全国ワースト1位で、脳梗塞や栄養面も男女ともにワーストクラスと紹介。その福島県内の中でもいわき市民は不健康なデータを列挙しました。いわきは医師の数が少なく高齢な上、市民も不健康で、解決に向けて若い医師を増やして育てる重要性を指摘しました。
● 医療人の育成の取り組み
市が取り組んでいる切れ目ない医療人の育成についても紹介。小中学生には市医師会と共同で「いのちの授業」、高校生には医学部コースが新設された磐城高校を中心に「医師の授業」・医学部入学前ガイダンス、医学部生には「地域医療セミナー」、初期研修医向けのセミナーといった世代ごとの育成プログラムを説明しました。今後は、ウェブ、SNS、紙媒体で情報発信にも力を入れていく計画で、チェックを呼び掛けました。
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● 意見交換
発表を聞いた地域包括支援センターの職員は深刻な医師不足の現状に衝撃を受けたとコメント。薬剤師は「『よもの会』に興味がある。見学できるのか?」と質問し、参加を誘われました。医師は「女性医師のバックアップ体制をつくることで、いわきに夫を連れて戻ってきてくれるかもしれない」と意見し「仲間で医療ができると医師も集まりやすくなる。つながりがあることが、医師の増加につながるのではないか」とアイデアを出していました。
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