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2020年08月06日

食育・口腔ケア 食べることは生きること・市川文裕氏伝記

838. 食べることは生きること・「食介護」を生んだ市川文裕氏伝記⑧・㊤~会長を継いだ医師に聞く

日本で初めて「食介護」を提唱した一人の歯科医師・市川文裕氏(享年56)=いわき市=の亡き後、意志を継いで「いわき食介護研究会」の2代目会長に就任したのが医師の皆川夏樹氏(56)だった。兄貴のように「トトロパパ」と慕っていた市川氏を、そばでどう見ていたのか。市川氏との思い出や「いわき食介護研究会」の先駆性をうかがった。(事業推進室・西山将弘)

 

「室蘭・登別 食介護研究会」の市民講習会で登壇する皆川氏。この時の講習会は「東日本大震災後」の報告会も兼ね、「いわき食介護研究会」の主要メンバーも参加した=北海道登別市・2016年(皆川氏の提供写真)

 

最近の皆川氏(右)。ご家族と伊達紋別岳を登山した時の一枚=北海道室蘭市・2020年5月(皆川氏の提供写真)

 

※皆川夏樹氏プロフィール:1964年山口県生まれ。京都大医学部卒業後、長野県の佐久総合病院、千葉県の老人保健施設に勤務。2000(平成十二)年にいわき市に引っ越し、常磐病院、当医和生会(いわきかい)山内クリニック、市立総合磐城共立病院(現・いわき市医療センター)で在宅療養や脳卒中診療、リハビリテーションに関わる。2013(同二十五)年9月に北海道登別市に転居した翌年、往診クリニックを開業するとともに「室蘭・登別 食介護研究会」を設立。同研究会は2019年春に休止した。

 

市川氏との出会いと当時の印象を教えてください。

当時の印象は、アニメ映画「となりのトトロ」に登場するキャラクター「トトロパパ」でした。ご自分でもよくそう言っておられましたが。最初にお会いしたのは、うろ覚えなのですが…、私がいわき市に転居して常磐病院に入職し、私もそれまで取り組んでいた嚥下障害の治療・対策に関わるようになったところ、看護師さんから「いわき食介護研究会」と市川先生の存在を教えてもらい、飛び込みで研修会に参加したのが最初だったと思います。ですので、転居した2000年のうちには参加していたでしょうか。食介護研究会が始まって、2、3年目くらいだったのだと思います。

 

―市川氏との思い出も多いようですね。

トトロパパには、いわきの美味しいお店に軒並み連れていっていただきました。個人的に可愛がっていただいた私にとっては「兄貴」のような存在です。私はバスケットをやっており、日曜日のバスケの練習時にボールを顔面に受けてさし歯が取れたことがありましたが、医院を開けてもらって奥様も従えて治療をしていただいたこともありました(笑)。

 

市川氏は介護保険制度が始まる前の1990年代から「食介護」を追求し、その後全国各地に普及していきました。「食介護」を大きく広められた理由はなんだったでしょうか?

やっぱりつまるところお人柄。老若男女問わず、みんな市川先生のお人柄が大好きでした。私自身あちこちお店に連れていってもらったり、ごちそうになったり、散々しましたが、ご本人が何より、食べること、飲むことが大好きだった、ということは大きいと思います。ほんと、いわきのお店は知らぬところがないようでした。

 

「いわき食介護研究会」の先駆性をお聞かせください。

うーん…、同時代に一緒に活動をしていたので、先駆性、というのが逆にわかりませんが…。「現れるべくして現れた」、ということなのかもしれません。「介護保険に先立って」とよく言われますが、現場としては介護保険が立ち上がるずっと前からすでに高齢者医療というのは大問題になっていて、嚥下障害、というのは大きなテーマでした。しかし、医者側はこの分野に興味を持つ人間はごく少なく、もともと食事介助を担っていた看護師さん達の方がすでに取り組みを進めていました。紙屋克子先生や、田中靖代先生が医療分野としては先駆者でした。

 

―「いわき食介護研究会」が立ち上がったころは、医師側の嚥下障害の関心はまだ薄かったのですね。

正確な言い方ではないですが、図式化して言うと、主に「嚥下障害(呑み込みの障害)」について、医者は「理屈」の研究をし、胃ろうを作る方向に走っており、看護師は「介助・介護」の視点からアプローチをしていた。そこに市川先生が、歯科の分野から、「咀嚼」「口腔内のケア」という視点を持ち込まれて、この問題を「嚥下」のみにとどまらず、「摂食嚥下」→「食べる」こと全体に広げて統合した。これが「研究会」としてのすごさだった。「研究会」のピークと言っていい、「摂食嚥下リハビリテーション学会公認セミナー」(※)の際の裏テーマとして、「食べることと環境」を取り上げて、「食事と音楽」「食事とインテリア」「食事と住環境」にまで踏み込めたのは、今もって斬新だった、と思っています。

 

「日本摂食嚥下リハビリテーション学会公認セミナーとして、いわき市で『いわき食介護学会』を開いた。市川氏伝記③」2020年4月23日投稿:https://iwakikai.jp/blog/3954/

 

「いわき食介護研究会」での思い出は?

研究会の一番の思い出はやっぱり、「摂食嚥下リハビリテーション学会公認セミナー」でしょうか。もう市川先生はだいぶ弱っておられて、それでもご挨拶と、シンポジウムの進行に壇上に上がられて。集大成のようなおつもりが、周囲にも伝わっていましたので、皆準備から必死で取り組み、県外から含め多数の方に参加して頂いて、大成功、と言ってよかったと思います。今も、これを書いている私のパソコンのデスクトップに、その際の市川先生の映像を残したままにしています。

 

(㊦へつづく)

 

【関連情報】

「室蘭・登別 食介護研究会とは」(「みながわ往診クリニック」ホームページ):https://www.minagawa-oushin.com/post/%E5%AE%A4%E8%98%AD%E3%83%BB%E7%99%BB%E5%88%A5-%E9%A3%9F%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A%E3%81%A8%E3%81%AF

 

【市川氏伝記バックナンバー】

https://iwakikai.jp/blog/?c=%e9%a3%9f%e3%81%b9%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%af%e7%94%9f%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8%e3%83%bb%e5%b8%82%e5%b7%9d%e6%96%87%e8%a3%95%e6%b0%8f%e4%bc%9d%e8%a8%98