皆さんは「子宮頸(けい)がん」という病気を知っていますか?発症率がとても高い病気ですが、定期検診で早期発見でき、ワクチン接種で予防ができます。しかし、数年前、「子宮頸がんワクチンによる副反応※」が大きく報道され、「ワクチン=危険」という不安が根強く残り、現在も、ワクチン接種をためらう親御さんが多くいらっしゃいます。
そこで、山内クリニック・家庭医の岩井里枝子医師に子宮頸がんの基本知識や予防方法について、詳しく聞きました。
※・・・当時、激しい痛み、失神、運動障害などの報告が多数寄せられましたが、その後の調査で、ワクチンとの因果関係は否定されています。
Q.子宮頸がんって、そもそもどんな病気ですか?
A.子宮の入り口部分(頸部)にできる「がん」で、ヒトパピローマウイルス(以下HPV※)感染が主な発生原因と考えられています。
※・・・HPVは非常に一般的なウイルスで生涯に80%以上の人が一度は感染すると言われています。免疫力によって多くの場合は排除されますが、一部は感染が持続し、数年かけてがん細胞へ進行することがあります。
Q.子宮頸がんの怖さって何ですか?
A.日本では毎年約1万人が子宮頸がんを発症し、そのうち約2,800人が毎年亡くなっています。女性特有のがんとして乳がんに次いで発症率が高く、特に20~30代のがんでは1位です。初期では症状が出にくく、発見されたときはがんが進行しており、子宮を摘出しなければならないケースも多いです。女性にとって、恋愛・結婚・妊娠…という人生で最も大切な時期に、“子どもを産む”という可能性が閉ざされてしまうことになります。
Q.どうやって予防できますか?
A.子宮頸がんは先に述べたとおりHPVというありふれたウイルス感染が原因で起こることが知られており、ワクチン接種による予防と定期検診による早期発見が重要と考えられます。
Q.子宮頸がんワクチンは、いつまでに打った方がいいですか?
A.日本産婦人科医会からは10~14歳の女性に対しての接種が最も推奨されています。これは、子宮頸がんのほとんどが性行為による感染であることと、日本では性行為の初体験が低年齢化していることが主な理由です。定期接種として打つ場合は小学校6年生(12歳)から高校1年生(16歳)の期間が認められています。次に15~26歳、そして希望があれば27歳~45歳の女性にも接種が勧められていますが、任意接種となります。
Q.ワクチンは何回接種するのでしょうか?また、費用はいくらですか?
A.ワクチンは原則3回の接種が必要です。上記で述べた定期接種の年齢範囲内であれば公費負担となるため自己負担はありません。ただし、任意で接種を希望される場合はワクチンによって料金が異なります。山内クリニックではどちらのワクチンも接種可能です。
【山内クリニックでの任意接種での自費料金(2021年10月現在)】
ガーダシル:1回16,700円(税別)
シルガード9※:1回28,000円(税別)
※シルガード9は、予防できるHPVの型が9型に増えたワクチンです。日本では2021年2月に発売開始となりました。
Q.親御さんに向けて、メッセージをお願いします。
A.山内クリニックでは子宮頸がんワクチンを勧めています。このワクチンは、若い女性を子宮頚がんから守ってくれます。私にも今年14歳になる娘がいます。ワクチンによる副反応を含め、よく考えた上で、接種することにしました。もし、子宮頸がんを発症し、子宮を摘出することになったら、娘は、将来子どもを産むという夢を奪われてしまい、身体的にも精神的にも苦しむことになります。ワクチンで予防できるなら、そのほうが断然良いと思ったからです。
皆さんにお伝えしたいのは、ワクチンの副反応だけを怖がらないでほしいということです。「子宮頸がん」という病気を正しく理解し、子どもたちの体、心、そして未来を守る選択をしてほしいと思っています。
(記事監修:医師・岩井里枝子)
岩井里枝子医師プロフィール
金沢医科大学卒業後、総合磐城共立病院(現在の医療センター)にて初期研修。金沢城北病院勤務を経て、平成27年より山内クリニックに勤務。家庭医療専門医として、家族・病気・健康問題などをひっくるめて患者に寄り添い、乳幼児から高齢者まで幅広く診療にあたっている。
当院での診療科目は一般内科のほか、小児の予防接種も担当。
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