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投稿:2021年11月26日更新:2022年12月26日

多職種連携・地域連携

1049. 高齢者の虐待 現状や対応学ぶ・平多職種連携の会

いわき市平地区の医療・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンラインで開催されました。平地域包括支援センターの職員が「高齢者の虐待対応」をテーマに発表。平地区で身体的虐待が増えている現状や、早期発見の心掛けを確認し、虐待に至る介護者の苦悩に寄り添う意見もありました。

● 約35人が参加
医師、歯科医師、薬剤師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護施設や地域包括支援センターの職員ら約35人が参加。11月18日に開催されました。発表者の平地域包括支援センターの職員が「高齢者虐待対応を通して専門職の皆様と共有したいこと」と題して講話。高齢者虐待、平地区の動向、専門職と共有したいことについて講話しました。

● 虐待の対応
高齢者虐待の対応について、発表者は事件性のある虐待に至るまでに小さな不適切なケアがあり、早期発見・対応が必要だと強調。「悪化すればするほど対応が困難、長期化する」とも呼び掛けました。根拠法令として「高齢者虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(2006年4月施行)を紹介し、特徴は「罰則はない」「関係者に通報義務がある」「通報は守秘義務違反にならない」などと説明。虐待の種類は①身体的虐待②心理的虐待③経済的虐待④性的虐待⑤介護・世話の放棄・放任があり、その他として、福祉サービスの利用が必要にも関わらず拒否している状態のセルフネグレクトも紹介されました。通報・相談のポイント(※1)、通報後の対応の流れ(※2)も確認。「包括支援センターは情報収集が主で、虐待判断は行政がする」と説明しました。

※1 通報・相談のポイント

※2 通報後の対応の流れ

 

● 全国的、平地区の状況
高齢者の虐待動向の解説も。全国的の虐待認定の件数(2019年度)は約3万4000件で、そのうち高齢者虐待は約1万7000件。一番多い種類は身体的虐待の67.1%で、理由は「傷が残って隠しきれない」と解説。それに続き心理的虐待、介護放棄、経済的虐待の順に多く、いずれも発覚が難しいもので「潜在的にはたくさんあるかもしれない」とも説明しました。さらに加害者の6割以上は男性介護者、被害の高齢者の7割以上が女性で、80代の母を50代の息子が介護するいわゆる「8050世帯」で虐待のリスクが高いと警告しました。いわき市平地区では、新型コロナが拡大した2020年度以降に虐待認定率が上昇(※3)。「SOSが出せず、コロナのストレスで高齢者に矛先が向いたか」と分析しています。また種類は身体的虐待が、加害者は男性介護者がいずれも多く、全国的な数字と同じ傾向にあると説明。「昨年ほど虐待対応に追われた年はなかった」と、増加の実感を語りました。

※3 平地区における高齢者虐待の動向

● 現場で一歩引いて冷静に見る
高齢者虐待の事例対応を踏まえ、判断するために見えないことを見えるようにする難しさ、犯人探しではなく「負担が多い介護者」として見るなど思いを共有。参加者と共有したい点として、不適切なケアが積み重なって虐待が深刻化する前の対応が大切で早期通報を呼び掛け。虐待のある家庭では不適切なケアが長期化して普通の感覚になっている可能性があるのを指摘。現場で一歩引いて冷静に見て、「おかしい」と思ったら一人ではなく複数で確認してほしいとアドバイスしました。虐待リスクが高い8050世帯については、疑った目で見ないまでも、将来的な見通しを考え、親世代が元気なうちにエンディングノートを作成するなどおすすめしました。

● 虐待を防止するために
あるケアマネジャーは、介護サービスの利用が不十分だが経済的に余裕がない家庭を対応した当時の悩みを共有。別のケアマネジャーは「8050世帯」が多いのを感じ、「介護する息子さんはトイレ介助ができなかったり、女性の衣類を買えなかったりする」と介護者の苦悩を代弁し、できない弱音を安心して引き出せる環境をつくり、ヘルパーが代わりに支援する体制を整える重要性を訴えました。ほかの意見では、虐待を発見したらすぐに被害者と加害者を引き離さなければならない一方で、現在は新型コロナの予防のためにすぐに受け入れられない施設もあって対応に苦慮している課題も共有されました。医師は、訪問診療の医師や看護師は診療・看護の際に、施設職員は入浴の際に、それぞれ体を見て身体的虐待に早く気づけるタイミングがあると意見し「気づいた時には気楽に相談できるようにするのが大切」と呼び掛けました。

● 認知症の人権を考える
認知症のミニ講話では「認知症の人の人権」がテーマ。認知症の人に対し、症状より周りの環境が生きづらさをつくる点に注意喚起し、心配するがために周囲が支援し過ぎて認知症の人の「やりたい」を奪う例を挙げました。そのほか、若年性認知症問題にとりくむ会「クローバー」の活動を紹介。「介護ではなく日常生活を続けるためのサポートがほしい」という若年性認知症者の思いも共有しました。

 

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