いわき市平地区の医療・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。発表した医師は、クラスター発生した高齢者施設のアンケート結果を踏まえた課題と対策を共有し、「コロナ後の医療」をテーマに発表しました。
● 14施設にアンケート
医師、歯科医師、薬剤師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、リハビリ職、介護職員など30人が参加し、7月20日に開催。発表した医師は「クラスター発生を経験した高齢者施設へのアンケート調査から見えた課題と対策、コロナ後の医療」と出して発表しました。宮城県内でクラスター発生を経験した高齢者施設でのアンケート(2022年度調査)結果を紹介。対象は介護老人保健施設や特別養護老人ホームなど計14施設で、クラスター発生の要因や対応を振り返り今後の備えに役立てる目的で行われました。感染者はほとんどの施設で職員よりご利用者様が多い結果でした。
● クラスターの要因
感染拡大の要因として一番多かった回答は「ご利用者様のマスク着用が不十分だった」(12施設)。次に「食事や入浴などの共有場面があった」(9施設)、「レッドゾーン内での職員の感染対策が不十分だった」(8施設)。レッドゾーン内での不十分な感染対策として出た回答は「N95マスク着用の不徹底」「職員個々の認識不足」など。その他の要因では、「職員がユニット間を交差してケアをしていた」といった回答もありました。
● 対策を確認
それらを踏まえて考えられる対策として、まずは水際対策。外部から施設にウイルスを持ち込ませないよう、入所施設はご利用者様の通院や外出時の感染、ショートステイのご利用者様、職員などの持ち込み、通所施設は通所前の健康確認をもっと細やかに行うといったそれぞれの注意点を挙げました。陽性判明前の体調不良者への対応では、検査結果が陰性でもその後陽性になる可能性があると警戒。そのほか、指揮命令系統・役割分担の「感染管理体制」や、陽性者と陰性者をきちんと分けるゾーニング、職員の理解不足、感染予防の備品などの注意点も確認しました。
● 「競争」ではなく「共有」
陽性者の治療で医療機関との連携についても触れました。施設内療養では施設医、嘱託医、かかりつけ医、協力医療機関との連携が不可欠で、有事に備えてほしいとも呼び掛け。回答で出た連携に関する事例で、医師が協力的で陽性者が出てもスムーズに手続きや対策ができた、容体が悪化しても救急の受け入れが決まらなかった、酸素ボンベや点滴スタンドなどが足りなかった、といった良かった点や課題を共有しました。そのほか、コロナ後の医療として、生涯未婚率の高まりから家族の介護力の低下の懸念、コロナに対応した医療機関の機能分担、介護職員の必要数、現役世代の急減していく人口動態について語りました。発表者は、コロナ後の医療・介護はマンパワーが重要で「医療は『競争』ではなく『共有』。地域の幸せのためには、いろいろな職種の人が情報共有することが大事」と呼び掛けました。
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