いわき市平地区の医療・福祉関係者が情報交換する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。発表した薬剤師は、HPN(在宅中心静脈栄養法)での薬局薬剤師の役割について発表。「退院カンファレンスに薬局薬剤師も呼んでほしい」と強く呼び掛けました。
● 「在宅療養したいが難しい」と考える人が多い
医師、歯科医師、薬剤師、介護職員など30人が参加し、9月21日に開催。発表者は「HPN施行患者訪問における薬局薬剤師の課題」と題して講話しました。発表者は終末期医療の意識調査のデータを紹介。人生の最終段階で医療を受けたい場所で、47%が自宅、39%が医療機関と考えています。自宅以外を回答した理由では、1位の53%が「介護してくれる家族の負担が大きい」、2位の38%は「急変時の対応に自分も家族も不安」。発表者は「自宅で最後を迎えたいが難しいと感じる人が多い」と分析。さらに、いわき市の在宅看取りの割合は全体の10〜15%で、全国平均よりも下回っているとも説明しました。
● 今後需要が高まるであろうHPN
在宅療養の選択肢を増やすために「本人やご家族に在宅療養を知ってもらう」「患者に合った治療方法を選択できる体制を整える」とし、その治療法の一つとしてこれから需要が高まると予測されるHPNが必要になると話しました。HPNとは、口から栄養を摂取できない患者に、鎖骨の下からカテーテル留置をして必要な栄養素を自宅でも摂れるようにする処置。「退院したいけど栄養補給ができない」という患者でも自宅療養できるようになると解説しました。
● HPNの条件
HPNを受ける条件として、病状の安定、院内外での管理・連携体制、合併症の発症リスクが少ない、3点を上げました。薬剤師として「安心・安全な輸液調整」「多職種間での綿密な連携」「患者・家族への継続的な教育」が求められ、「地域の在宅療養チームの一員として積極的に活動する必要がある」と語りました。
● 退院時カンファに参加へ
発表者はHPNを実施した2つの事例とそこで感じた課題と対策を共有しました。課題では病院側と電話とFAXで行ったため、訪問前の準備がスムーズにいかなかったと振り返り。その対策として「退院時カンファレンスに参加する」。退院に向けて医療・介護者が集まるカンファレンスに薬局薬剤師はあまり呼ばれない現状に触れ、薬剤師の強みを訴え連携を呼び掛けました。輸液調整や訪問が遠距離で時間が掛かり人員確保が困難という課題も。対策では輸液調整の業務効率化を図るとともに、患者の近隣の薬局との連携を上げました。そのほか、訪問終了後の不要在庫が残った、点滴に関する相談を受けて対応方法が分からなかった、といった課題と対策を共有しました。最後、患者から手紙や対面でお礼を言われた喜びを伝えた一方「もっとできることがあった。もっと精進していきたい」と抱負を語りました。
● 連携の強化へ
質疑応答では、看護師から「病院が薬剤師ともっと連携できたらいい。どう連携して情報共有できるかを検討していきたい。在宅療養への思いは一緒だと感じた」と前向きなコメントを寄せました。最近いわき市で働くことになった薬剤師は「前職は訪問クリニックが輸液ポンプを準備していたが、いわきではどうしているのか?」と質問し、発表者は「病院が準備するケースが多い」と回答。別の薬剤師から「どのくらいの頻度で訪問しているのか?」という質問に対し、発表者は「1人の患者には大体週1回。点滴の内容によっては3日に1回の時もある」と回答。質問した薬剤師は、発表者と同様に退院時カンファレンスに声が掛からない悩みを共感し、「呼んでほしい」と呼び掛けました。山内俊明会長(山内クリニック院長)は「こうした連携の場で課題を共有し、今後もみんなでどうすれば良くなるかを考えていきたい。これからもつながりを大事にして少しでも患者様のためにいい治療ができるようになればいい」と話しました。
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