いわき市平地区の医療・介護・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。若手薬剤師が在宅医療をテーマに発表。初めて在宅訪問を担当した患者様が自宅で倒れているのを見つけた緊急対応を振り返り、学びを共有しながら参加者にアドバイスももらいました。
● 20人が参加
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護職員、リハビリ職など20人が参加し、9月19日に開かれました。発表者は「私の在宅訪問〜衝撃的なデビュー編」と題して発表。初めて担当した在宅訪問の患者様で、一人暮らしの70代女性を取り上げました。その女性は糖尿病の治療中に甘いものを食べてしまい、血糖コントロールが改善されていなかったといいます。訪問した時、女性の友人がお菓子を持ってくるのも見かけ「差し入れは糖分を控えて」とも伝えたこともあったとも。根気強く生活指導をしていたが改善されず「力不足を感じた」と指導の難しさを振り返っています。
● 訪問時、患者様の異変に気づく
訪問では朝の薬はヘルパーのお陰で服用できていたが、それ以外は飲めていない状況でした。そこで壁掛けだったお薬カレンダーを、すぐに目に付くように卓上に置ける日めくりタイプに変えて手作りしたが、それも改善されませんでした。さらに週1回の訪問を続けて1カ月、女性の呂律が回っていない瞬間に気づきました。次の訪問で、たくさんお話したがうまく言葉が出ない様子が多くみられ異変を「確信」したという。薬局に戻って病院に連絡し、その日の報告書にも強調して提出しました。後日、訪問すると女性の返事がなく、ベッドで苦しそうに倒れ意識がない女性を発見。119番通報、ケアマネジャーと主治医に連絡した。突然のでき事で「緊急時対応を学んでいなかったのを後悔した」「在宅訪問は患者様の急変や在宅死にいつ遭遇してもおかしくないと気付かされた」と学びを共有しました。
● 参加者に助言を求める
発表者が「知識や経験があればうまく対応できた」と反省したのは4点。「薬の飲み忘れの改善」「血糖コントロール、生活習慣の改善」「患者様の異変に事前に気づいたのに対応が不十分だった」「急変時の対応が不十分だった」。質疑応答ではこれらの反省点のアドバイスを参加者に尋ねました。聴講した薬剤師は薬飲み忘れの支援策で、認知症患者と一緒にお薬箱を作ったことがあったといい「愛着が生まれたのか、朝、昼、夕と書いた箱に入れて飲み忘れがうまくいった」というアイデアを共有しました。
ケアマネジャーは、訪問ヘルパーから患者様の異変の連絡を受けた際、救急車の要請をお願いした話を共有。「その時病院に行っても病院によっては『家族以外には病状を説明できない』と言われた。ケアマネジャーが駆け付けても病状を受けられる立場でないのかと感じた」と悩みを打ち明けました。他のケアマネジャーも、緊急対応の経験を交え「訪問看護を受けていたり、明確に『在宅で看取り』という意思がない限り、おかしいと思ったらまずは救急車を呼ぶのがいい」とアドバイスしました。
● 緊急時こそ連携が大切
地域包括支援センターの職員は、お薬手帳のコピーや緊急時の連絡先などを入れた救急キットの備えをお勧めし、救急キットがあって助かった事例も紹介しました。初めて参加した行政書士は、事務手続きができない独居のお年寄りから相談を受けて在宅支援の勉強をしたいと参加理由を話しました。欠席した同連携の会の山内俊明会長(山内クリニック院長)に代わり締めのあいさつをした歯科医師は、患者様の緊急時こそ多職種の連携が大切になると、支え合いの必要性を呼び掛けました。
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