いわき市内で高血圧の有病率が一番高い川前地区の川前公民館でこのほど、医和生会(いわきかい)山内クリニックの山内俊明院長が健康長寿で生き抜くための講話をしました。川前地区高齢者等支援ネットワーク連絡会での一幕で、家庭で習慣的に血圧測定して健康管理する大切さを助言。地区住民からコロナ禍で働く医療・介護従事者のために感謝を込めて作った千羽鶴も受け取り、地域の健康を守る気持ちを新たにしました。
※1 山内院長の紹介
● 医療・救急関係の3人が登壇
同連絡会での講話は国保事業で、いわき市の小川・川前地区保健福祉センターが、小川・川前地域包括支援センターと12月11日に共催。「健康長寿で生き抜くために」をテーマに、山内院長のほか、小川・川前地区保健福祉センターの保健師・飯塚てい子さんと平消防署川前分遣所の木村賢哉所長が登壇し、講話と座談会をしました。
● データで見るいわき市民の不健康
飯塚さんは「健診結果から見えてくる地区の健康課題」と題して講話。65歳を過ぎて要介護2以上にならずに過ごせる平均的な長さを定めた「お達者度」の算定結果で、いわき市は「全国」「福島県」と比較していずれも低いと紹介。健康寿命の平均年が全国は17.92に対し、いわき市は16.2。さらにいわき市はがん、心疾患、脳血管疾患の標準化死亡比、65歳時の平均余命などが県内13市でいずれもワースト1〜3位で、不健康というのが明らかに。さらに市内でも川前地区は高血圧や肥満症の割合が1位と解説し、健康予防の意識向上を呼び掛け。1人当たりの医療費が市の平均より顕著に少ないのも同地区の特徴で、飯塚さんは「治療を後回しにしないでほしい」と、不調を感じたら早めに受診するよう勧めました。
● 家庭での定期的な血圧測定を訴え
山内院長は「〜山間地・無医村でも大丈夫〜『健康長寿で生き抜くための健康管理』」と銘打ち講話しました。山内院長は、脳心血管病で亡くなる約50%が「(家庭測定の場合)最高血圧115mmHgかつ最低血圧75mmHg」(※1)を超える血圧高値に起因するという推定データを挙げ、健康管理のために「家庭で定期的に血圧測定してほしい」と繰り返し強調。起床後と就寝前の1日2回を少なくとも週5日間計測し、朝と晩それぞれ1週間の平均値を記録するようアドバイスし、血圧高値に達したら早く受診するよう呼び掛けました。
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正常高値血圧(治療まではいかないが要注意)となる「最高血圧115mmHgかつ75mmHg」はリラックスした家庭で測定した場合の値で、病院でのこの測定値は「最高血圧120mmHgかつ最低血圧80mmHg」。
● 早期受診の重要性を強調
山内院長は65歳以上の要介護になった主な原因も解説。男性は脳血管疾患が多い一方、女性は骨折・転倒が多いと、性別ごとに介護予防の注意を促すと、来場者から「うん、うん」とうなずく声。また、心筋梗塞や狭心症の血管状態をイラストで紹介し「心筋梗塞の前に気付けたら死亡率が下がる。10人中3人は亡くなり、治っても具合が悪い可能性が高い」と、早期受診の重要性をあらためて強調。最後、「循環器科・救急対応パンフレット」(※2)を配布して急変の備えを呼び掛けたほか、「私の想いをつなぐノート」(※3)を紹介しました。
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※3 「山内クリニック・岩井里枝子医師のコラム・わたしの想いをつなぐノート」
● 「もしもの119番に備えて」
木村所長は「もしもの時の119番に備えて」と題し講話。救急車を呼ぶ事態にならないように普段の生活から病気やけがに注意するのを「予防救急」というと説明。早期受診の大切さも訴えました。実際の119番通報の音声も流し、慌てた通報例として「いいから早く来て」と何度も繰り返すやり取りを紹介。通報時は落ち着いて指令員の質問にゆっくりと答えるよう呼び掛けました。
● 来場者から質問
座談会では来場者から質問を受け付け。「救急車を呼んでも搬送先の病院が決まらず時間が掛かるのが心配」という声に、木村所長は努力を尽くしている現場の声を届け、飯塚さんは根本的な原因にいわき市の深刻な医師不足があり「だからこそ生活習慣病の予防をしてほしい」と訴え、山内院長も同意しました。そのほか、川前地区は医療機関まで遠い課題の話題などがテーマに上りました。また、ある来場者は「今日の話をつどいの場でもみんなに話したい」と感想を述べていました。最後、千羽鶴の贈呈では、代表者が山内院長に医療・介護従事者への感謝の言葉を送った後、地区内の上桶売、下桶売、志田名、高部、五味沢の各つどいの場の参加者で作った3000羽の千羽鶴を手渡しました。山内院長は「クリニックに飾りたい」と感謝を述べました。
↓山内クリニックで飾られた千羽鶴
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