いわき市平地区の医療・介護関係者が情報交換する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。歯科医師が「いわき市歯科医師会で行った訪問歯科診療に関するアンケート」の結果を発表。訪問歯科診療をする医院が少ない理由などを専門職みんなで共有しました。
● 訪問歯科診療する医院が少ない現状
医師、歯科医師、薬剤師、ケアマネジャー、介護職員、地域包括支援センターの職員ら30人が参加。2月17日に開催されました。発表した歯科医師は、歯科医師会会員にアンケートした背景を説明。介護施設に定期的な訪問口腔ケアを行っていた医療機関が歯科医師不足で休止していたため、同会が代わりの対応依頼を受けたものの、引き受けられる歯科医院がなかったといいます。介護保険の算定ができる歯科医院がほとんどないからではないかとの声を聞き、今春に勉強会の開催を計画。その告知と合わせて訪問歯科診療と介護保険に関するアンケートを実施。勉強内容は訪問歯科診療の導入、介護保険の算定方法、いわき市の多職種連携など。アンケート対象の歯科医院数は151件で、勉強会の参加希望者は21人(うち平地区は8人)。アンケート回答率は57件の38.3%(平地区は28件の50.9%)でした。
● なぜ訪問診療しないか
質問は全7問。訪問診療しない理由、やめた理由で多かった答えは、「年齢、体力的にきつい」「時間がない」。その他理由では「衛生士がいない」「腰痛」「偶発症に対する不安」「予約を受けて訪問したら、本人から治療を受けたくないと断られることが続いた」など。介護保険を算定していないのが13人(うち平地区5人)で、多くの理由は「算定開始の手続きなどが分からない」「算定の仕方が分からない」。訪問診療全般に関する困り事では「治療が限定的になる」「準備からレセプトまでの流れを知りたい」「1人より2人以上診療した場合の訪問診療料が低いのを改めてほしい」など。回答結果を報告後、発表者は訪問歯科診療の保険算定について解説しました。
● 介護保険の勉強会開催へ
訪問歯科診療の最近の動向で、発表者は、大学でも在宅歯科医療などの授業があり若い歯科医師の関心が高まっている一方、常勤の歯科衛生士不在の小規模歯科医院は点数も低くやる気を削がれている面も指摘。いわき市の訪問歯科診療の推進のため、訪問診療や介護保険の知識を深める勉強会を開催して訪問する歯科医院を増やし、大規模歯科医院や家族で診療しているような休診せずに訪問できる医院に協力を呼び掛ける点などを挙げました。
● 参加者で意見交換
参加した歯科医師は「訪問歯科に興味を持っている歯科医師は増えている感じがする。増えていくよう長い目で見守ってほしい」と話しました。ケアマネジャーは介護保険について「1人より2人以上診療した方が点数が低いというのに驚いた」と感想。言語聴覚士は「今後口腔ケアで歯科医師や歯科衛生士が訪問できない時に言語聴覚士がその役割を担うようになるのでは」という見通しを述べました。この訪問口腔ケアを言語聴覚士も担う意見に対し、看護師は「みんなでやっていけばいいと感じた」と賛同。発表した歯科医師は「介護保険を分かっている歯科医師は少ない。どういう介護施設があるか、勉強の機会があれば参加していきたい」とまとめました。
● 「認知症予防」を考える
認知症ミニ講話では、いわき市平地域包括支援センターの認知症地域支援推進員が「認知症予防」をテーマに語りました。「予防」とは「認知症にならない」ではなく「認知症になるのを遅らせる」「進行を緩やかにする」という意味と説明。一次予防のリスク12因子を挙げ、最も関連性が強い因子という「難聴」のほか、「高血圧」「肥満」「抑うつ」「糖尿病」「喫煙」などに注意を促しました。さらに認知症の症状である「BPSD(行動・心理症状)」も解説しました。医師は「BPSD の患者は嫌なイメージの記憶が残る気がする。認知症になる前からいいコミュニケーションを取っていると、患者が認知症後もいいコミュニケーションを取ることができる。悪いイメージを与えない対応が必要」と、参加者に心得を補足しました。
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