▼「『地域包括ケア』で医者が行政側から利用され過ぎてはいないだろうか。行政ばかりでなく患者さんと真摯に向き合ってニーズを探り、患者さんのための事業を展開していくことを期待します」。これは当法人山内クリニック開業25周年のインタビューで、薬局「タローファーマシー」の長谷川祐一社長がおっしゃっていた言葉です。地域連携に携わる医療・福祉側の大切な心構えをあらためて考えさせる発言だと感じ、わたくしなりにその真意を解説してみたいと思います。
▼関係者は聞き飽きたであろう2025年問題から書かせていただきます。2025年には団塊の世代が75歳を迎え、高齢者人口が3500万人に達し、認知症高齢者も150万人(2002年)から320万人に急増すると厚生労働省は推計。社会保障費が急増し、医療・介護を担う人材も不足すると予測されます。この危機的状況に備えるため、国は各地方自治体に「地域包括ケアシステム」を推進させ、各市町村は医療、福祉が連携し、住民が互いに支え合える地域をつくろうと知恵を絞って取り組んでいるところです。
▼国からお達しを受けた各市町村は、その自治体に合った形の「地域連携」を模索します。行政は医療や福祉関係者の交流を促進するため多職種連携の会や認知症カフェなどを開き、医療、福祉の現場も連携しようと取り組んでいます。ここであらためて肝に銘じたいのが長谷川社長の言葉なのではないかと考えます。患者・介護を必要とする方々の苦しみの声を一番直に多く聴き、その想いを理解している人は医療・福祉に携わっている方々のはずで、その方々はつまり地域医療・福祉のために何が必要かを一番知っている人たちだと思います。だからこそ「行政のすること=市民のため」という認識で行政の言われるがまま医療、福祉の現場の人たちは動くのではなく、例えば「この地域でこれで困っている人は何%いる」というようなデータからは聞こえない苦しみの声も届け、行政と想いを一つにして議論する心構えが大切なように思えます。決して「行政は市民のために動いていない。行政と連携するな」と言いたいのではございません。
▼長谷川社長は、いわき市勿来地区で日本初のデイケアを始めた齋藤内科の齋藤光三医師の例もお話されました。行政が「地域包括ケア」といい始める何十年も前から齋藤医師は生活困窮者の声に耳を傾け、その方々のために何が必要かを考えて独自に連携して支援しました。さらに「開業してから地域医療を自らつくっていったのも山内先生の功績」とおっしゃってくださり、我々職員も医和生会が地域のために今日まで取り組んできたことに誇りを持っていいように思えました。
▼「医療・福祉側が『患者様・ご利用者様の苦しみの声を一番理解している』とプライドを持った上で行政とも連携していくことが求められるのではないか」。これが記事冒頭の長谷川社長の一言の意図だったのではないでしょうか(個人的な推測です)。インタビュー記事内容の確認をお願いしての長谷川社長の返信はこうでした。「言ってた自分が恥ずかしい限りです」。(「地域連携・企画広報課」・西山将弘)
<2018年6月の記事ランキング(5月25 日~6月22日のフェイスブックのリーチ数)>
一位 「広がらない障がい児の訪問看護。なぜ?」 6月2日投稿:https://iwakikai.jp/blog/960/
二位 「ままはーとの地域公開勉強会『多職種連携の考え方と方法』」 6月21日投稿:https://iwakikai.jp/blog/918/
三位 「発達障がい児も安心して予防接種できる診療所に・スワンキッズくらぶから協力依頼受けて山内クリニック」 6月5日投稿:https://iwakikai.jp/blog/956/
四位 「天皇、皇后両陛下が『いわきの里』近くを訪問」 6月9日投稿:https://iwakikai.jp/blog/950/
五位 「平地域包括支援センター中央台サブセンターが開設」 6月1日投稿:https://iwakikai.jp/blog/962/
<番外・山内クリニック開業25周年インタビュー③>
「上・長谷川社長」 6月6日投稿:https://iwakikai.jp/blog/955/
「下・長谷川社長」 6月7日投稿:https://iwakikai.jp/blog/954/
<記事中に登場した齋藤光三氏記事>
https://iwakikai.jp/blog/?c=%e9%bd%8b%e8%97%a4%e5%85%89%e4%b8%89%e6%b0%8f%e4%bc%9d%e8%a8%98
【過去の取材雑記とランキング】