いわき市平地区の医療・介護関係者が情報交換する「平在宅療養多職種連携の会」が、このほどオンライン上で開かれました。介護支援専門員(ケアマネジャー)が、余命短い若いがん患者様を在宅で看取った事例を発表。経済面の工夫や最期の望みをかなえた支援を紹介しました。
● コロナ禍の在宅看取り
医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、ケアマネジャーら約40人が参加。5月19日に開催されました。事例発表のタイトルは「コロナ禍の在宅看取り」。取り上げられた患者様は余命1カ月とがん宣告された40代の女性。日常生活や移動は全介助を要し、夫や子どもは通勤・通学のために日中は一人になり、家事・育児は夫が負っていました。発表したケアマネジャーは、患者様が住宅ローンや学費などで経済的に余裕がなかった点を指摘。そこで末期がんで認定される介護サービスを利用した話や、余命1カ月では認定まで時間がなく諦めた障害者の受給サービスについて語りました。患者様ご家族から経済的事情のため「必要最低限のサービスにしてほしい」という要望で、訪問診療や看護などの回数を最小限にしたプランを立てたと話しました。
● 入浴の望みをかなえる
患者様は自宅で過ごしたいと望む一方、どうなるか分からないという不安も抱えていたといいます。発表者は主治医が「病院のベッドを空けておく」と言ってくれたお陰で、ご家族含めみんなが万一の場合の受け皿があるという安心感を持てたと振り返りました。最期まで望んでいた入浴の支援では、患者様の身体的負担が課題に。本人に入浴のリスクを伝え、急変時の対応や蘇生を望むかなどを事前に確認したといいます。さらにご家族が入浴に同席するようにし、訪問入浴の事業所も安心して支援できた結果、亡くなる4日前まで湯船に浸かることができ「さっぱりして良かった。ありがとう」という感謝も受けたといいます。亡くなる前日には訪問看護師が「今夜がヤマ」と察して関係者に連絡。夫は仕事を休み、家族がみんなそろって看取りを迎えられたとも話しました。発表者は、コロナ禍の緊張状態でも、病状が急速に進むために週1回訪問を続けて変化を把握し、迅速で柔軟な支援ができたと振り返りました。
● 学びを得た参加者
感想で、参加したケアマネジャーからは「若い方を支援した経験がないので参考にしたい」と学びを得た様子。担当した事業所の訪問看護師は「担当ケアマネジャーが看護師の資格があるので対応が素早かった」と看護の知識が生きた点を挙げ、担当した訪問看護師は患者様と同年代だったのもあり思い出して涙ぐみ、週1回の訪問でも主治医と工夫してやり取りした支援を共有しました。
● 支援の悩みを共有
ほかのケアマネジャーから、在宅看取りを前向きに考えるようになってきた患者様を促す方法について質問が出て、発表者はご家族のことも考えて揺れ動いていた患者様の心を思い出し「(在宅で看取るかどうか)きちんと決めなくてもいいのではないか」と今回の経験を踏まえた意見を述べました。ほかのケアマネジャーからは、病院で最期を迎えるのを決めた患者様への対応で悩みを相談。「ほかに入院できる病院はないか」など深い相談を受けたものの、不用意に回答しては病院の相談員に迷惑が掛かるのではないかと懸念し、答えを濁した複雑な気持ちを共有。信頼を受けていたからこそ深い相談を受けていたのに、答えられなかった後悔の念を吐露しました。最後、発表者は支援者との情報共有方法や患者様の食事についての学びを伝えました。山内俊明会長(医和生会山内クリニック院長)は、定期的にみんなが集まっていると困った時に協力し合えると、この多職種連携の会の意義を強調。困難でも望みをかなえた今回の支援をねぎらい「これからもみんなで集まって、協力体制をつくっていきたい」と呼び掛けました。
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