いわき市平地区の医療・介護関係者が情報共有する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。市内の訪問介護事業所にアンケートしてまとめた現状と課題を、訪問介護員(以下「ヘルパー」)が発表。ヘルパーの不足と高齢化、多職種の連携の体制整備などの課題が共有され、参加者が意見交換しました。
● 市内15事業所がアンケートに回答
医師、歯科医師、薬剤師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、地域包括支援センター職員ら30人が参加。10月20日に開催されました。発表者のヘルパーが「訪問介護事業所の現状と課題」と題して発表。10月上旬までの約1カ月間、市内の23訪問介護事業所にアンケート7問を呼び掛け、回答があった15事業所の意見をまとめて現状と課題を浮き彫りにしました(※記事末尾にアンケート結果)。
● 訪問介護事業所が抱える4つの課題
発表者は結果から分析した4つの課題をまとめて紹介。その課題は①多くの訪問介護事業所がヘルパー不足で高齢化②多職種にわたっての「連携」体制の整備が必要③独居や認知症、精神疾患など困難事例の方に支援する上で知識や相談先の確保が不足④訪問介護事業所間での協力。①について発表者は、「訪問介護事業所だけで解決するのは難しく、行政と連携し事業所みんなで解決する必要がある」と早急な対策を呼び掛けました。②では、特に小規模の訪問介護事業所は多職種連携の難しさを感じているとも。③では困難事例の場合に自分達で悩んで抱え込んでいると伝えました。
● 参加者と意見交換
アンケート結果で、ヘルパーは訪問歯科医師、訪問リハビリとの連携ができていない声が多かったのを受け、発表者は「日々の訪問でご利用者様にどう指導したらいいか、教えてもらえる場があるといい」と意見し、訪問歯科医師は「往診の際にヘルパーやご家族がいれば教えてもらえる」「市歯科医師会に連絡してもらえれば、訪問介護事業所でヘルパーに直接指導もできる」と受け止めました。コロナ感染予防で悩みを抱えている訪問介護事業所も多く、発表者は対策を質問。別の訪問介護事業所の職員は、各自防護服を持参し感染対策の研修もしている取り組みを共有。医師は、訪問前に体温を測ってもらって熱があれば家に入る前に防護服を着る、といった具体的な対策を指導しました。また、地域包括支援センターの職員は、障がいを抱えた困難事例での相談先として「障がい者相談支援センター」を紹介し気軽な連絡を呼び掛けました。平在宅療養多職種連携の会の山内俊明会長(山内クリニック院長)はコロナの感染対策を改めて呼び掛け「今後の対策をこれからも皆さんと考えていきたい」と締めました。
<アンケート結果(いわき市内15訪問介護事業所が回答)>
①事業所でヘルパー不足以外に困っていることはありますか?
はい10・いいえ5
「はい」の主な意見:ヘルパーの高齢化・ご利用者様やご家族の体調不良(コロナ)時の対応
②利用者様の対応で困っていること、悩んでいることはありますか?
はい11・いいえ4
「はい」の主な意見:精神疾患がある方への接し方・コロナ感染が疑われた場合の対応と、感染の有無が判明するまでのサービスの有無
③居宅、包括支援センター、医療機関などとの連携で困っていることはありますか?
はい10・いいえ5
「はい」の主な意見:土日、祝日、夕方などに発生した緊急時にケアマネジャーと連絡が取れない
④薬局、訪問歯科、訪問リハビリなどとの連携は取れていますか?
はい5・いいえ10
「いいえ」の主な意見:色々と相談した、指導を受けたいが、中々連携が取れない状況
⑤ヘルパー不足に対して、事業所で何か対策を行っていますか?
はい12・いいえ3
「はい」の主な意見:ホームページを作成した・チラシやウェブなどへ求人広告を掲載しているが、費用が高い
⑥ヘルパー不足の中で、新規問い合わせなどで工夫していることはありますか?
はい10・いいえ5
「はい」の主な意見:他事業所と連携を図り、複数の事業所で対応することで、新規の利用者様の受け入れをしている
⑦居宅、医療関係など多職種での連携を図り支援ができていますか?
はい12・いいえ3
「はい」の主な意見:ご利用者様宅に連絡ノートを置いて関わっている人で情報交換を実施・メディカルケアステーションを活用
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