「認知症って怖い病気?」「まさか自分や家族がなる訳がない」。そう思われる方もいるかもしれませんが、10年後には「65歳以上の5人に1人が認知症」という推計もあるほど、認知症は誰もがなりうる病気です。認知症への正しい対応、自分や家族の認知症予防につなげるためには、私たち一人ひとりが「認知症」を理解することが大切です。医和生会(いわきかい)の介護支援専門員(ケアマネジャー)で、認知症のスペシャリストでもある芳賀がシリーズで解説します。
今回は、認知症を具体的にイメージできるように、芳賀が実体験に基づいて説明します。
● ケース①失敗を知られたくない
私がご利用者様(80代・女性)宅を訪問した時のこと。部屋に入ると尿の臭いが漂っていました。本人からは尿の臭いがしないので、旦那さんと一緒に臭いの元を探すと、タンスの中から汚れたオムツを見つけました。捨てる場所の間違い、もしくは「排泄の失敗を知られたくない」という羞恥心から失敗を隠そうとする、認知症の人に見られる行動です。
● ケース②季節や時間感覚がわからない
夏の暑い日、ご利用者様の自宅を訪問すると、部屋が閉め切られ、ご本人は何着も服を着込んでいました。気温は30度近く、明らかに暑いので「暑くないですか?」と聞きましたが、「暑くない」と返答。「天気がいいから、窓を開けましょうね」と窓を開けても、帰る時にはその方は閉めていました。ほかには、デイサービスに行く日ではないのに「車が迎えにこない!」と何度も電話を掛けてくる方もいます。「今日はデイサービスの日ではないですよ」と伝えても、なかなか理解してもらえず、直接会いに行き、カレンダーを見せて説明し、納得してもらえたこともありました。
● ケース③見えないはずのものが見える
幻覚や幻聴に襲われる方もいます。ご利用者様の自宅を訪問した際、ご家族も含め3人で会話をしていると、突然ご本人が「車の中に男の人が座っている」とつぶやきました。「怖い、こっちを見ている。助けて」と泣きそうな表情でした。車の中には誰もいないのですが、「見てきますね」と車を見に行き、「大丈夫ですよ。いなかったです」と伝えると安心してくれました。そのご家族からの情報では、ご本人は夜になると「部屋に子どもがいる」と、実際はいないのに幻覚を訴えることもあるということでした。
● 認知症の人の目線で想像する
認知症の人は、記憶が薄れるにつれ、『何かが違う』と自分自身の異変を感じています。幻覚や幻聴に悩まされながら、誰にも相談できずに不安を抱えている人もいます。そんな時、家族や周りから「なに言ってるんだ」「なんでこんなこともできないんだ」と非難されれば当然悲しい気持ちになってしまいます。理解できない行動に、怒ったり、がっかりしたりするのではなく、なぜこのような行動をしてしまうのか原因を知り、認知症の人の目線になって想像することが大切です。次回は認知症の原因などについて、詳しく解説します。
<講師・芳賀の紹介>
医和生会居宅介護支援事業所のケアマネジャー。介護の仕事歴18年。「福島県認知症介護実践指導者等養成指導者」として県から認知症介護の指導者育成を任されたり(※1)、「認知症キャラバンメイト」として地域住民に認知症の理解を広めたり(※2)もしています。
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