「認知症って怖い病気?」「まさか自分や家族がなる訳がない」そう思われる方もいるかもしれませんが、2022年度のデータでは、65歳以上の3人に1人が「認知機能にかかわる症状がある」ということがわかっています。(厚生労働省「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」より)
つまり、認知症は誰もがなりうる病気です。
認知症への正しい対応、自分や家族の認知症予防につなげるためには、私たち一人ひとりが「認知症」を理解することが大切です。
そこで、本シリーズでは医和生会(いわきかい)の介護支援専門員(ケアマネジャー)で、認知症のスペシャリストでもある芳賀が、認知症に関する基礎知識や接し方、予防について、身近な体験を通してシリーズで解説します。

医和生会のケアマネジャーで認知症のスペシャリスト・芳賀
第1回は、芳賀がこれまでに出会った方々との関わりを振り返りながら、認知症を具体的にイメージできるようにお話しします。
● ケース①失敗を知られたくない
私がご利用者様(80代・女性)宅を訪問した時のこと。
部屋に入ると尿の臭いが漂っていました。
本人からは尿の臭いがしないので、旦那さんと一緒に臭いの元を探すと、タンスの中から汚れたオムツを見つけました。
捨てる場所の間違い、もしくは「排泄の失敗を知られたくない」という羞恥心から失敗を隠そうとする、認知症の人に見られる行動です。
● ケース②季節や時間感覚がわからない
夏の暑い日、ご利用者様の自宅を訪問すると、部屋が閉め切られ、ご本人は何着も服を着込んでいました。
気温は30度近く、明らかに暑いので「暑くないですか?」と聞きましたが、「暑くない」と返答。
「天気がいいから、窓を開けましょうね」と窓を開けても、私が帰る時にはその方は窓を閉めていました。
ほかには、デイサービスに行く日ではないのに「車が迎えにこない!」と何度も電話を掛けてくる方もいます。
「今日はデイサービスの日ではないですよ」と伝えても、なかなか理解してもらえず、直接会いに行き、カレンダーを見せて説明したところ、ようやく納得してもらえたこともありました。
● ケース③見えないはずのものが見える
幻覚や幻聴に襲われる方もいます。
ご利用者様の自宅を訪問した際、ご家族も含め3人で会話をしていると、突然ご本人が「車の中に男の人が座っている」とつぶやきました。
「怖い、こっちを見ている。助けて」と泣きそうな表情でした。
車の中には誰もいないのですが、「見てきますね」と車を見に行き、「大丈夫ですよ。いなかったです」と伝えると安心してくれました。
そのご家族からの情報では、ご本人は夜になると「部屋に子どもがいる」と、実際はいないのに幻覚を訴えることもあるということでした。
● 認知症の人の目線で想像する
認知症の人は、記憶が薄れるにつれ、『何かが違う』と自分自身の異変を感じています。
幻覚や幻聴に悩まされながら、誰にも相談できずに不安を抱えている人もいます。
そんな時、家族や周りから「なに言ってるんだ」「なんでこんなこともできないんだ」と非難されれば当然悲しい気持ちになってしまいます。
理解できない行動に、怒ったり、がっかりしたりするのではなく、なぜこのような行動をしてしまうのか原因を知り、認知症の人の目線になって想像することが大切です。
次回は認知症の原因などについて、詳しく解説します。
<講師・芳賀の紹介>
医和生会居宅介護支援事業所の主任介護支援専門員(ケアマネジャー)。20年以上介護の仕事に従事。認知症介護指導者養成研修の修了者であり、「認知症キャラバン・メイト」の資格も保有。
ケアマネジャーとして利用者さんの在宅生活を支える一方で、地域住民に向けて認知症への理解を広める活動にも力を入れています。
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