いわき市平地区の医療・介護関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」が、このほどオンライン上で開かれました。双葉郡で活躍する薬剤師が「かかりつけ薬局」をテーマに地域包括ケアの課題を発表。参加者は、医療人材が不足する地区で多職種連携で患者を支える取り組みから学びを得ていました。
● 医療過疎 双葉郡の医療体制
医師、歯科医師、薬剤師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護職員ら35人が参加。7月21日に開催されました。「かかりつけ薬局としての地域包括ケアへの参画と課題」と題し、楢葉町の薬剤師が発表。発表者は東京電力福島第一原子力発電所の事故後の楢葉町を含めた双葉郡の医療体制を紹介。病院、診療所、歯科診療所、薬局の位置を示した地図で説明し、浪江〜富岡町の約35キロ間に薬局がない現状を語りました。楢葉町に2020年6月、県内初の公設民営薬局として誕生した「ならは薬局」の概要を説明。現在は常勤薬剤師2人と応援に来る薬剤師、調剤補助もする常勤事務らがチームで外来や訪問で地域医療を支えていると紹介しました。
● 地域包括的な取り組み
同薬局は地域で知ってもらうために住民や専門職に向けても情報発信。地域包括支援センターや地域ケア会議などで活動の説明に回ったり、住民向けには出張講話や併設しているサロンで健康講話をしている取り組みも紹介しました。同薬局が対応した事例は、転倒して診療所から紹介された認知症の患者の傷をケアしたことを紹介。訪れる患者をトリアージして近隣の病院に相談する取り組みも行っているといいます。在宅医療の介入事例では、困難な事例や緩和ケアの事例を取り上げて共有しました。課題として人員確保を挙げ、若い薬剤師に興味を持ってもらえるよう、見学実習に取り組みたいと話していました。
● 参加者からの声
発表後、いわき市から応援に行っている薬剤師は「(双葉郡は)医療資源が乏しい地区なのに多職種連携が進んでいると感じ、平地区でも参考になる。スピーディーに動いている印象ですごい」と話し、若い薬剤師や学生に働きかけて薬剤師を育ててほしいとも言葉を送りました。別の薬剤師からは「人材が少ない中で患者一人一人密に対応して、どんなスケジュールで対応しているのか」という質問に、発表者は、在宅専門の薬局で働いていた前職の経験が生きている点を挙げ、応援の薬剤師がくる曜日に積極的に在宅対応していると回答。それでも人材が足らず、首都圏の大学にも声掛けして連携を模索しているところといいました。ICT活用に関する質問では、お年寄りが自分でオンラインを使えず、役場や診療所に置いて誰かがつないでくれる状況をつくれないか検討中だとも話していました。平在宅療養多職種連携の会の山内俊明会長(医和生会山内クリニック院長)は「地域医療の在宅を支える中心的なポジションをやっている感じがした。薬剤師が残薬調整や食事をやってくれると助かる。医療、介護だけでなく生活を支える取り組みに感動した」と感想を語りました。
<平在宅療養多職種連携の会・関連記事>
「地域包括ケアを考える」
「年間計画を確認、近況の情報交換」
「いわき市の健康推進の取り組み共有」
「訪問歯科診療のアンケート結果を共有」
「特養に入所するまでの手続き確認」
「多職種連携で障がい者を支える」
「高齢者の虐待 現状や対応学ぶ」
「いわきのコロナ第5波、振り返り」